住まい手との出会い
住まい手のHさまご家族との出会いは、22年の正月明け早々のお問い合わせでした。まだ生まれて間のないお二人目のお子さんがいるため、まずはzoomでのご相談からということで、オンラインでの初回ご相談というのが初めてのことで非常に印象がありました。
土地探しのご相談でした。すでに候補地を見に行っておられていて、その土地についての懸念事項などをお話しした記憶があります。それからモデルハウスでの面談、相談の土地の実見。懸念事項からその土地は見送ることになり、その後候補地が出ては一緒に見に行かせていただきましたが、なかなかご縁がなく既の所で先を越されたりという具合でした。出会いから半年ほど経ち西大寺で土地が見つかり設計開始となりました。
歴史的な寺社仏閣の立ち並ぶ奈良市西大寺に建つQ1.0住宅level3の住まい。
こういった古い町並みの残るエリアには景観法により建物の形状や色などに規定があり町並みを損ねないように配慮が求められます。設計にあたりまず初めにしたことは周囲の散策。周辺の建物や町並み、望む景色から思い浮かんだ家の形は、4間角総2階建て田の字型の家でした。屋根の流れ方向に入り口を設けた平入りにし、ポーチ部分には広い下屋根を掛け、玄関が外から丸見えにならないように、下屋根を支えるあらわしの柱に面格子を設けました。また玄関を入るとこれまた広めの土間と吹抜けのある広い空間。そしてそのままリビングとなります。玄関土間の右手の通り土間からはキッチンや裏庭へと抜けていくことができるようになっています。
リビングの奥には、WEBデザイナーである奥様のワークスペース。ワークスペースの位置は、仕事と家事育児を両立できるように奥まった位置へ配置。ワークスペースの窓からは、奥さまお気に入りのマルバノキが見られます。
吹抜け階段を上がると、可変性を持たせた子ども室。お子さんが小さい間は一部屋として使い、個室が必要な年ごろになれば、ケンドン式建具で間仕切り2室にします。さらに、年の離れた上のお子さんが独立すれば、また一部屋に戻します。そして、下のお子さまも独立すれば、入口の引違戸を外し、ホールやセカンドリビングとして利用できるようにしています。
またその子ども室の前にはスタディコーナーを設け、造り付けの本棚も備え付けています。さらに奥には夫婦の寝室、W.I.C、書斎、水回りの風呂、洗面、トイレも2階に配置。
29坪でも広い家
西大寺の家は約50坪弱という比較的ゆったりとした敷地面積ですが、風致地区であるため建蔽率は40%、容積率は60%ということで、家の大きさは29坪以下に抑えなければなりませんでした。しかしわずか29坪という限られたスペースではありましたが、これだけのボリュームのある空間にまとめられるのは、廊下や玄関ホールなどを省き、ロフトでも寝ることができるくらい家じゅうの温度が一定でどこもが居場所となる高断熱住宅ゆえにできたプランだと言えます。
外壁には焼杉、内装には吉野杉の赤勝ちのフローリング。壁や天井の一部にはラワンを使っています。製作建具もラワン、キッチンも扉もラワンを使うというこだわり。またメインの壁には白ではなく、ベージュがかった色味の仕上げで、全体的に色温度の暖かい空間に仕上げられています。細部にまでこだわられた色の使い方も、センスの良さもこだわり方もやはり奥様のお仕事柄でしょうか、流石の一言でした。
庭とつながる縁側
西大寺の家のこだわったところを上げるときりがありませんが、一番をあえてあげるとすれば庭の土をかさ上げしたことでダイニングテーブルの位置からチェアに腰を掛けた時に庭とリビングがひとつづきに見えるように工夫したところです。庭への掃き出し窓を高さ40㎝のベンチ兼収納の上に設置し、その先に縁側(ウッドデッキ)を設置するのですが、そのままだと地面からの高さが1mほどになり、庭から腰掛けることもできませんし、リビングからも地面が見えず庭が遠くなってしまします。そこで、庭に土を入れ60センチほどかさ上げし、ちょうどリビングと庭の高さを同じくらいにしてあげ、庭からも縁側に腰かけることのできる40㎝ほどの高さとなりました。これによりリビングからも地面や庭木の根元も見え、庭が近くなりました。
庭と家をつなぐ縁側。お子さんたちが庭で遊ぶのを縁側や食卓から眺めるご夫婦、その光景がいつしかご家族の原風景となればと思います。
2023年5月竣工
建物用途
一戸建ての住宅
規模
地上2階建て
延床面積96.06㎡(29.06坪)1階 51.34㎡ 2階44.72㎡
建築面積65.01㎡
構造
主体構造 木造軸組 基礎 一体打ちベタ基礎
外部仕上
屋根:ガルバリウム鋼板立平葺き
外壁:焼杉
内部仕上
床 :吉野杉
壁 :エッグウォール オガファーザー+デュブロン ラワンベニヤ
天井:オガファーザー+デュブロン 吉野杉 Jパネル ラワンベニヤ
断熱仕様
基礎:押出ポリスチレンフォーム3種bA 立上り部100mm スカート部60mm
屋根:HGW16K 240mm
外壁:HGW16K 120mm + HGW16K 55㎜
開口部:アルミ樹脂窓 LIXIL TWトリプル 玄関 スウェーデンドア
換気+空調:高性能全熱型1種換気システムDOMEO210+ダイキン製アメニティエアコン4.0Kw
建物性能
耐震性能3 耐風等級2(許容応力度計算)
Q値0.94[W/㎡K]
UA値0.33[W/㎡K]
C値0.2[㎠/㎡]
暖房負荷14.9[kwh/㎡] 冷房負荷15.7[kwh/㎡]
Q1.0住宅Level-3 省エネ基準住宅モデルに対して19.8%
安全持続性能『★★の家』
安全設計★ 持続設計★★
受賞歴
第8回 日本エコハウス大賞 W受賞
【新築部門】 優秀賞
【協賛企業賞】 TOSTEM GREEN WINDOW賞
メディア掲載
『SO 日本の上質なすまい3』 [発行:新建新聞社 2024年11月18日]
『建築知識ビルダーズ58』 [発行:(株)エクスナレッジ 2024年8月27日]
『作業療法士が伝えたい ケガをしない家づくり』 [著書:満元 貴治 発行:学芸出版社 2023年9月15日]
『新建ハウジング』 [発行:新建新聞社 2023年8月30日]
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