みなさん、こんにちは!そして、初めまして。この記事でライターを務める南と申します。
この記事は、大幸綜合建設様の住宅ブランドDAIKOstyleの性能向上リノベーションについて、社内メンバーで対談を行った様子をお届けします。どんな想いで家づくりに向き合っているのか?そして、性能向上リノベーションという難しさが伴う工事を事業として展開することへの考えを代表を務める表 孝典 氏・設計営業を務める西田 宏則 氏・現場で大工を務める浅井 靖夫 氏の3名で対談を行いました。
性能向上リノベーションの意義とは?
まず初めに伺ったのは、性能向上リノベーションをなぜ取り組んでいるのか?どんな想いやこれまでの経験があったのか?などみなさんの中にあるルーツを探りました。
(表社長)
高性能に特化した技術を出していくことが会社の方針で間違ってないと信じてます。まだまだ理解が広まりきっていない分、大変なんですけど、ここはやっていくべきだと思ってます。こういった技術が必要で、誰にでもできないことをやっていくことが、厳しい市場の中で工務店として生き残っていくことにとっても強みになるなと。新築で実績を積んで、+αの部分としてリノベもマンションも施設も、高性能化していけば、日本の国の環境問題も解決していけますし、生活環境の底上げが実現できると信じてます。だから、そこは仕事の中身として絶対に外せないです。
(西田)
そうですね。元々、3年ほど前に事業のブランディングで自社の良さをもっと世の中に知ってもらえるようにしようと考えた時に、まずは新築の戸建住宅をしっかりと実績を積み重ねて、その技術を持って時代に合わせて性能向上リノベーションを続けて展開して、地域の方々にこんなに良いものがあるんだということを知ってもらいたいと考えてました。それだけじゃなくて、次のステップとしてマンション高性能リノベーションや社長の実家をリノベーションするなど視野には入れてましたよね。
そこで、なんでリノベかというと。
大幸綜合建設に僕が入るまでに大工の浅井さんとやってきたのは、どちらかと言えばリノベの件数の方が多かったんです。そこで、この仕事は、思い出の部分が大切だなと感じてたんです。せっかくの家を壊して建てるよりも、当時の家を+30年住めるようにして、住み続けていく・住み継がれていくということ。それに、暑い寒いや使いにくいなどの我慢を強いれられる生活だったり、今年の夏にも節電を政府が言うように国が率先して健康に害のあることを我慢しろっていうのは違うなと思うんです。もっと言えば、経済的にも無理なく住める家づくりっていうのは大事で。家は人を守るシェルターという考えから始まっているからこそ、こういったことを全部大事にして家族の思い出を守りたいなというのが本音の部分ですし、安心を得るという経済的な安心・健康的な安心、それは新築だけじゃないとできないわけじゃないんですよね。
(浅井)
新築なら0からになるけど、リノベーションは積み重ねの部分。思い出を継承していく、次につないでいく。だから、お客様目線を大事にしていて、理想を形にするのが職人の仕事だと思ってます。不便さやここがこうだったらという想いを組み入れて、今まで住んできた家のをベースにして、どうやったら今より快適になるだろうということを一つずつ実現していく。だから、0ではなく積み重ねなんです。
作り手から見た性能向上リノベーション
(西田)
戦前戦後で、家に求めることが国民や国の対応でも変わってて、特に間取りなんかがそうですよね。戦前は田の字型で、衣食住が同じ場所になってるんです。その時の季節に合わせて使う場所や使い方を自由に変えるようなスタイルです。けれど、今は衣食住が別になっているのがスタンダードですよね。歴史的なところからの話で、これから資材高騰や、ニーズとしての性能向上、そういったことを考えていくと大きな家を建てるのも大変になってくるのが明白なんです。現代において、日本本来の家に対する日本人らしさなどに原点回帰していくことも一つなのかなと思ってます。原風景を大切にするというか。戦後から現代に続く、早く安く建てろという家づくりっていうのは長持ちさせることが求められてなかった時代だったということなんです。それが40~50年経って今になって、建物の通気や断熱、耐震が考えらえれてない建物として課題を生んでるのが現状なんです。それを今の技術で使い続けられるようにするという課題も、対応できる工務店がまだまだ少ないという問題があります。そこで特に僕が思うのが、浅井さんのようにしっかりと考えて、知識を深めていこうという職人さんが少なすぎる!求道心がない感じで。仕上がりにこだわりもない、「こんなもんだろう」で済ませてしまう。職人さん全員とは言わないですけど、目先の仕事だけに向かって、その先にあるお客様の暮らしまで想定していない人が多いように思います。だから、若い子にはそういったことを教えていきたいし、自分の家ならどうかということを投げかけたい。ほとんどの人にとっては、人生で1回の家づくりだから、こちらとは見え方が違うというのが当然です。だからお客さま目線になることってとても大切だなと思うんです。
(浅井)
そうだね。職人ははっきり言って二極化されてます。新築ばかりの大工は、リノベーションは面倒臭い。なぜかというとわからないから。現場調査や施工を一生多くこなして経験が深くなると、嘘みたいな話ですけど壁の中が想定できるんです。壁の中が見えてなくても、中がどうなっているかを目視や触れたりすることで探し出せる。手を当てれば構造を確かめられる。現場での経験から少しの変化を見落とさない。若い子に教えるのは、そういった現状を見て、現状から前に進んでいく仕事の仕方です。仕上がりの逆算をするには、ここがどうなっているだろうということが大切で面倒なんですよね。正直、新築は0だから誰でもできるものなんです。冒頭に話したみたいに、リノベーションは積み重ねなんです。
(表社長)
確かに。浅井さんが今年の7月に社員になってくれて、これだけ熱を入れて教育をしてくれるというのも大きいですね。とにかく熱量がすごいし意気込みがすごいんです。お客様や設計事務所などにもそれが伝わるのがすごく良いなと思ってます。
(浅井)
ありがとうございます(笑)
仮説を立てて検証して、逆算していく。現況から前に進むには経験しかない。見方のコツは教えられるけど、触って・叩いて・踏んで感じ取っていく。お客様に言い切れない部分だけど、こうだったらこう、こうだったらこうという仮説を話せることが大事じゃないかな。大工をしてきて30年で、町の工務店からスタートして、大工としての想いは全てがエンドユーザーからの依頼なので0から経験をしてきたんです。だからそれは自負できる。何年ということではなく、どこまでも追求していく。
(西田)
超能力みたいですね(笑)
でも製材所の人とかで、木を見て木目を想定したり、ふしがどう出るかを製材する前でも判断するみたいな。仮説を立てて、蓋を開けてどうだったのかということが経験則になっていくんでしょうね。それが、壁を開けないでも中がわかるという透視能力になると(笑)
(浅井)
…(笑)
会社入る時、社長に「30年いろんなことを教えてもらったから、それを今度は恩返しする時期に来たと思っていると。」伝えてて、これからの子に自分が何ができるだろうということを日々考えてます。それでもわからないことはわからない。けれど、それを若い子たちと一緒に学んでいかないといけない。自分のスキルアップのために学んでいくことは大切。基礎から上の人間。それはしっかりと学んでいかないといけないし、いい機会を与えてもらっていると思ってます。
作り手:職人には三種類がいる
(浅井)
職人目線としては、職人は3種類いると思う。
それは、1,作業員 2,職人 3,棟梁、この3つがある。
作業員は、言われたことを言われた通りにやるだけ。職人は、自分の仕事の中で自分で考えて仕事ができる。棟梁は、家の責任者・現場の責任者だという意識で、全ての業者さんの収まりも想定して仕事をしていく。言われたことであかんことがあっても言われたからやるというのは違うと思うんですよね。”なんのために”ということが仕事には必ずついてくるかと。これじゃないとあかんと言えることも大切ですよね。無駄なことはしたくないのが職人。だから、なんのためにこうすればこうなるという一言、要は提案を言えるのが職人かと。僕の今の役目は、その一つ一つを引き上げていくことだと思ってます。みんなが職人になって、みんなが棟梁の考えになれたら僕の仕事は終わりですね。今までやってきたこれでいいだろうという部分だけでなくて、もっと良くするためには、こうこうこうだからこうじゃないとダメだと自信を持って仕事ができる人を作っていかないといけないなと思っている。正直言うと昔の家の大工さんってすごい。今は電源があれば工具を使って楽になんでもできるけど、昔の職人さんは道具箱一つで、今と同じものができている。その技術力も身につけないといけないと思います。日に日に良い状態で収めることができる自信を持った仕事を。過去を生かしながら次に繋いでいくというのが僕らの責任かと。
(西田)
ほんとそうですよね。納得して、技術を提供するのは原理原則を知っていることが大切ですね。言われたことをやるだけの人を見てて思うのは、理由まで興味を持たないってことかなー。浅井さんは、これまで新住協で学んできたことを話しているとちゃんと聞いてくれて実践してくれます。
(浅井)
根本の部分がわかっていれば、つながっていく。全ての連続性がある。特に、気密や断熱は。家の絵を描いて、ここがつながっているかどうかを解説してあげるとみんなわかりやすいね。
(西田)
基礎があるから応用があるってことですね。
(浅井)
うん。今でも気密の部分はどこでどう収めるかは、必ず西田くんに確認をしてるしね。僕は、納得しないとやりたくない。
(西田)
机上で習ったことをどう現場で体現できるかどうかは大工さんがわかってくれてないと難しいんですよね。浅井さんにはそこで助けられてます。10年前から一緒に食事に行って、高性能住宅のこと解説して、説得してきたからこそかなと(笑)浅井さんとの付き合いは長くて、浅井さんとじゃなきゃ今がないなと思います。
(表社長)
先代の時は大工さんが10名ぐらい居た時もあったんですよね。その時は、住宅の仕事が多くて、良いもの使って建ててきた自負はあるけれど、性能はその時代の性能で…。今となると適合してないということがたくさんあります。けど、大工さんたちがしっかりしてくれていて骨組みがしっかりしているので、それを残して性能化していくというのは、うちにとっても大切なことだなと。西田の知識と、浅井さんの職人魂が一緒になることがほんとに重要。会社に来てくれたことによって、それが現実味が増してきたし、それを船頭として若い子に伝えていきながら、広めて、チームを作って、一つの建物を作り上げていく。そういうストーリーを作って、どんどん巻き込んでいく。その中で、感動を味わえば次、またその次と繋がっていくし、それがお客様にも伝わると、次の仕事にもつながっていくと思うし。同じ年代同士がOBさんとして繋がっていくことにも繋がるし、それが将来は地域活性化にも繋がると思ってます。街が活性すれば自然と環境は良くなるんでね。
一人一人がプロフェッショナルで、その上で社長の最後の言葉に重みを感じて、この人たちならすごいものを未来に残していきそうだと、話を聞いていて私も感じました。それでは、このインタビューの最後に皆さんから伺った、これからリノベーションなどを検討する方々へ向けてのメッセージをどうぞ。
スタッフからのメッセージ
(西田)
思い出を残せるように、けれど住むにあたっては快適かつ安心して住んでいただけるようにいたします!
(浅井)
初めの話に繋がるんですけど、0からではなくて継承後継に繋げるのがリノベーションだと思っているので、一緒に作っていかないとと思ってます。お客様もただやってもらうだけではなくて、次に繋げることを考えてほしい。”自分の世代だけでもういいねん”だと、性能向上リノベーションという大きな決断には繋がらないと思います。子どもたちや孫たちに住んでもらおうと思うからこそ、リノベーションになる。一緒に未来を考えて、こうだなと追求していく。そこで僕らの強制はしません。こうだからこういう風に残したいという気持ちから、実現するためにはどうしようを考えるのがこちらの仕事。その方法を説明していく必要があると思ってますし、建物やそこに根付く様々な想いをを預かっていると思っています。新築は仕上がって渡すもの。どこまでもお客様のもの。そこが大きな違いですね。
(表社長)
浅井さんの話にもありましたけど、”守っていく”ということは、会社でも言えるんです。会社も歴史を作っていく、継続していくのが大事なんです。お客様も家という歴史を同じ場所・同じ地域で住み続けていく。人生100年と言われているけれど、住み継ぐのはもっと先のことまで考える必要があるんですよね。補強しながら、修繕しながら、素材も時代にあったものを使いながら、ずっと共存共栄していくことが大切だなと思います。私たちは、施設や学校もメンテナンスしているので、公共も踏まえて、同じ環境を守り続けている自負があります。社会も、地域もお客様の暮らしや家を守ることが大幸綜合建設の使命です。
(浅井)
最後にちょっと、小話ですけど。
木材ってそのまま使えるわけじゃないんですよ。木の癖や反りを見極めて、それを直してから幅を揃えたり加工する必要があるよね。それを直さずにそのまま加工したものは、結局、綺麗に見えても実は反っていたりしたままで、後々狂いが出やすくなるんよ。けどそれを全部やろうと思うと会社に機械の設備が整ってないとできないんですけど、この会社は機械的にも設備が整っているから直すことができる。木は捨てるところがないから、今の環境なら全部使えるんです。古家で出た古材も手を加えてちゃんと使い続けるということができます。そういう全てを活かせる環境がここにはあります。
最後は、浅井さんの木に対する想いで話を締めくくりました。
初めから終わりまで、技術というものに対するこだわりが強く、本当に良いものを提供したいという気持ちが表れていて、終始私も聞き入ってしまいました。性能向上リノベーションというこれからの時代に欠かすことができない大切な技術は、経験と提供する会社としての組織体制が重要だと私は読み解きました。歴史に恥じることのない、人の技術と経験が大幸綜合建設さんからは感じることができます。そして、この記事を通してリノベーションという形式を今一度見直してみて、これまで活かしてきた資産を、さらに住み継ぐことができるように変えていくというこの魅力をみなさんにもお届けできていればと思います。
【ライター】
株式会社ヒトモノコト 南 和彦