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日本人の灯り感と灯りの歴史|2023年最新

家づくりブログ設計のお話全て
2023/07/30

こんにちは!東大阪を中心とした大阪・奈良で高断熱高耐震の木の家専門店として注文住宅を建てるDAIKOstyle西田です。

今回は照明計画についてのお話

日本の灯りの歴史

その前に日本の照明の歴史の変遷について知っていただいておいた方が、より照明計画のことがわかるので、まずそこからお話ししたいと思います。

日本の照明の歴史、文化が大きく変わったのは戦後です。余談にはなりますが、前回の工務店とハウスメーカーの違いのブログ記事でも、戦後の復興、高度経済成長が大きな影響を与えたことをお伝えしましたが、建築業界や照明だけでなく、教育、食文化、さまざまな分野でも、やはり戦前戦後が大きなターニングポイントとなっています。

さて照明=灯りの文化において戦前の日本では、明治時代に入ってきた電球が主な照明でした。誰でも知っている、かの有名な発明王トーマス・エジソンが京都の八幡産の真竹を使ったフィラメントにより、1879年(日本では明治時代)に実用的な白熱電球を開発しました。

明治時代に電球が登場したといっても、日本中すべてが電球で照らされたわけではありません。当時の電力会社との契約は使用燈数制で電球は貸付け、料金は10W1灯で今の3~4万円。
したがって家に電球が1個しかないのは普通で、長いコードを付けて持ち回りに使っていと言われています。

村はずれの一軒家や山奥の集落まで電気が届いたのは1965年(昭和40年)頃のことですから、明治大正時代の大邸宅に吊るされているシャンデリアがいかに贅沢品だったか解ると思います。

ちなみに普通の家で廊下や便所にまで照明器具がつくようになったのは1950年(昭和25年)代以降のことです。

遡ると、電球の普及する昭和初期まではロウソクや種油などを使った照明器具、燭台(しょくだい)行燈(あんどん)灯台などです。火が灯りの源だったわけです。ガス灯やアーク灯などの登場もありますが、いずれも街灯としてのそれで、屋内、それも一般の家庭にとっては、使われるものは永らく火が灯りだったわけです。

したがって、それまでの日本人の生活は、暗くなったら寝る。早寝早起きがというのが、庶民の基本的な生活リズム。

現代人のように、夜遅くまで照明をつけて働くと言うものではありません。

実は、灯りの文化というのは、歴史的な背景から現代人に与えた影響は、経済面だけでなく、健康面にまで寄与していることが考えられるので、実に興味深い話となります。

 

戦後、復興の象徴としての蛍光灯の台頭

戦後、焼け野原となった日本の復興の象徴として広く普及した蛍光灯。戦後の電力不足の問題により消費電力の大きな電球に変わり、省エネな蛍光灯がアメリカより入ってきました。これにより、それまでの電球中心の生活から、天井に蛍光灯を設置し、その部屋中を明るくたらされるようになりました。夜、街を歩くと住宅でも商店でも、オレンジ色の夕日のような美しい電球の光が、青白い昼間の太陽のような蛍光灯の光に変わっていったのです。

まさに明るさが復興の標し、そして豊かさの象徴として、蛍光灯が電球にとって代わっていきました。日本ほど蛍光灯の普及の早かった国はほかにはないと言われています。オフィスビルの蛍光灯化は普通ですが、日本では住宅の蛍光灯化も率も80%に達しています。

 

電球の灯りやろうそくの色温度

灯りの歴史ともうひとつ、知っておかなければならない話が色温度の話。

明かりには色温度というものがあるのは、ご存じでしょうか?色温度とは、光源が発している光の色を定量的な数値で表現する尺度でり、単位には熱力学的温度の K(ケルビン)を用います。

色温度が高くなれば青くなり、色温度が低いと赤くなります。

ろうそくの火は 1900K

白熱電球       2800K

蛍光灯        6500K

となっています。

ちなみに、太陽の光の色温度ですが、朝日や夕日の色温度は概ね2000K。

普通の太陽光線は5000~6000Kで、澄み切った高原の空の正午の太陽の光はおおよそ6500Kです。

もうお気づきだとおもいますが、照明の色温度と太陽の色温度には共通性があります。朝日や夕日は、ろうそくの火と近い、赤身の強い色温度。電球はそれよりもやや黄色みが増します。そして、蛍光灯は晴天の昼間の太陽光と同じような色温度です。

 

色温度と生活のリズム

電球が登場して140年ほど、蛍光灯が登場して80年ほど。太古より日の出とともに目覚め、日のもとで働き、日が沈めば休息するという自然界の昼夜のリズム通りに暮らしていた期間にくらべれば、照明の歴史など、ほんのわずかなものでしかありません。

睡眠と起床の生活リズムと一緒に、ホルモンの分泌、体温の変化、消化器系の活動、大脳の働きなどの生体リズムがあり、これはDNAレベルでそのリズムは人の体に深く刻み込まれています。昼夜の交替、つまり明るさ=色温度と人のリズムは密接に関係しています。

朝日や夕日の温かい光を見ると、人はなんとなく落ち着きます。色温度の低い光は、副交感神経を活発にし、体をリラックスさせる効果があります。これは日が昇り、これから活動をするための準備をするため、日が沈み体を休ませるという人の持つ生活リズムからなるものです。

また日が昇り、太陽のもとで活発に活動する日中は、色温度が高く、交感神経が刺激され、脳が覚醒し体が活性化します。体を活動的にするスイッチが入るというわけです。

 

色温度と健康の関係

人の生活リズムは明かるさ=色温度と密接に関係しています。それが本来、体を休めるリラックスするための家の中が、全体的に明るい蛍光灯=日中の太陽光の色温度だとどうでしょう。

常に蛍光灯などの色温度の明るい部屋だと本来、体をリラックスさせる時間帯である朝も夜も昼間だと頭と体が錯覚し、常に活動的な状態となり、人のもつ本来の生活と狂いが生じそれがストレスとなり、深い眠りに誘導されず不眠症などの睡眠障害や体の不調をきたすことがあります。

 

現代の住宅の色温度の不自然

戦後、復興の象徴、豊かさの象徴であった蛍光灯の明るい住宅とは、実は人の生活リズム、生体リズムにとっては、不自然なものだったのです。しかし戦後80年、照明器具が蛍光灯よりも省エネなLED照明器具(しかも色温度を調整しやすいLED)へと変わった今もなお、昼光色という色温度6500Kの明るさの天井に設置し部屋の隅々までを明るく煌々と照らすシーリングライトがごくごく一般的な照明器具となっています。

確かに、働くためのオフィスなど日中の活動をする建物での蛍光灯の色温度は適したものとなっていますが、一方で本来、体を休めリラックスをするための住宅では、色温度の低い電球やろうそくの灯りの方が適しているのです。

電球照明やろうそくの火が主たる照明器具だった戦前の日本の住宅の方が情緒ある住空間、そして自然にあった灯りの暮らしをしていたのです。

 

日本の本来の情緒ある灯りの空間を

戦後、復興の象徴として手に入れた  夜でも昼間の太陽のような天井から部屋中を明るくする光は、それまでの情緒ある火や電球に灯りによる日本人の暮らしを一変させました。

古来から日本の住宅の灯りとは屋内用の器具には、燭台や行灯などの火による灯りで、それも床上におくものが主流でした。そしてそのことは日本建築での、畳が明色、壁が中くらいの色 、天井が暗色であることと合っています。

光はまず、 明るい畳に当たり、ふすまや壁に跳ね返り、上方の暗い天井へと向かいます。吊り下げ式の器具もありましたが、それは軒先や入口、廊下用の物ばかり。つまり長い日本人の住環境において灯りは今と違い、上からではなく低い位置に灯り(光源)があったのです。

小説家 谷崎潤一郎さんの随筆、『陰翳礼讃』(いんえいらいさん)では、まだ電灯がなかった時代の今日と違った日本の美の感覚、生活と自然とが一体化し、真に風雅の骨髄を知っていた日本人の芸術的な感性について論じています。

西洋の文化では可能な限り部屋の隅々まで明るくし、陰翳を消す事に執着したが、いにしえの日本ではむしろ陰翳を認め、それを利用することで陰翳の中でこそ映える芸術を作り上げたのであり、それこそが日本古来の美意識・美学の特徴だと主張されています。

明るいところと暗いところを作る、つまり陰翳が日本人の持つ本来の灯り感なのです。

一室一灯から一室多灯へ

部屋全体をあかるく照らすシーリングライトは、まさに一室一灯の照明です。部屋の隅々まで明るくするには適していますが、その反面、灯りが必要ない場合でも常に明るく照らし、陰翳も情緒もありません。ただ明るいだけです。

それに比べ必要なところに必要な灯りを落とす照明計画を一室多灯といいます。複数の照明器具により光と影のコントラストはまさに、日本人の古来の感性に届くそれはまさに陰翳です。

また一室多灯は省エネにもつながります。そもそも省エネ性能の高いLED照明器具を使う事も相まって、消費電力の少ない照明器具を分散して配置することで、省エネ効果が高まります。

一室多灯に使う照明器具は代表的なものに、壁付けのブラケットライト、ペンダントライト、ダウンライト、スタンドライトなどがあります。一昔前に多様された天井に光源のあるダウンライトは日本古来の灯り感を考えると、最近ではリビングなど主たる空間には避けたいところ。そういう意味では、壁を垂らすブラケットや古来の行燈にスタンドライトなどは日本人の灯り感に適していると言えます。また建築化照明といい、天井や壁にくぼみを設けそこに照明器具を仕込む間接照明なども陰翳の表現が美しく、日本人の感性に合っています。

 

次回は、実際に施工事例を紹介しながら、日本の情緒ある照明計画についてまとめたいと思います。

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DAIKOstyle 西田

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